田辺聖子と井上ひさしが褒める川柳です(平成10年5月号 中央公論から)
伯父が川柳家であったので興味はありますが、日常生活を川柳にするような知恵はありません。
田辺聖子全集(集英社)で面白い井上ひさしとの川柳に関する対談を見つけました。そこで「川柳は人生と人間のわずかな機微、本当に小さなちょっとした瞬間をつかまえて、それを解剖するもの」と説明されています。やはり鑑賞だけに止めておいたほうがよさそうです。
2人が褒めた句を以下に並べますのでまずご自分で解釈してみてください。
「貧しさもあまりの果は笑ひ合ひ」 雉子郎
「大日本 天気晴朗 無一文」 三太郎
「牡蠣船は 貸を残して 国へ立ち」 水府
「天に星 地にお手は何 お手は何」 半文銭
「御破算で 願ひましては 民主主義」凡柳
上から順に1〜5とナンバリングして、2人の評価をそのまま記すと長くなりますので換骨奪胎して書くと
1.これは意味は分かりますね。高度成長期の前は多くの人の境遇がそうだったのではないでしょ うか。雉子郎が文豪の吉川英治というところが驚きです。
2.大きなところから順に身近に至るところが芸。日本海海戦の場面で見たような。
3.かつて広島から牡蠣船が大阪にやって来て商いをし、かなり儲けていた。その大容なこと。
4.天の川の下は大阪の路地、星の下での縁台将棋が熱を帯びて。外野からもささやきが。
5.井上が褒めます。戦争直後の日本をグサッと刺していると。
この句の本歌取りで今の日本について川柳ができそう。
(内藤元晴 記)
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